一般参加型 分散コンピューティングの歴史 (1996〜2000)

 分散コンピューティングの紹介 - 更新履歴・過去のTOPIC - 日本語でのニュース

 当情報サイトが立ち上がる2000年11月以前の、一般参加型分散コンピューティングの歩みを編纂いたしました。
 これ以降については更新履歴を参照して頂ければ幸いです。

 まとめ - 1996年 - 1997年 - 1998年 - 1999年 - 2000年
 ・ 簡単な まとめ 
 1996年、一般参加型分散コンピューティングは、個人あるいは数名により、数学愛好的立場から始められました。
 **山根信二さんから1988年のRSA100桁解読と1993-1994年のRSA129桁解読の情報をお寄せいただきました。この部分は書き換え予定です。>>もう少し詳しく

 1997年、RSA Laboratoriesが10000ドルの賞金をかけたSecret-Key Challenge(共通鍵暗号解読コンテスト)を開催します。
 それに呼応するかのように登場したプロジェクト群は、射幸心を煽り、暗号解読プロジェクトはコンピュータ,ネットワーク愛好家に広まりました。

 1999年春、口径305mのアレシボ電波望遠鏡からの受信データを分析して、地球外知的生命体を捜すSETI@homeが登場した時、TV・新聞などのマスコミまでもが、この野心的・夢のあるプロジェクトを取り上げ、SETI@homeは半年で100万人の参加者を集め、世界最速のスーパーコンピュータを優に越える処理能力となりました。

 その後、数学・暗号・電波解析だけでなく、様々な分野、特にライフサイエンス分野への利用が進んでいきます。参加者に支払いを標榜するベンチャー企業も登場していきました。

 ・ 1996年 
1996-01メルセンヌ素数探索のGIMPS始動。一月でユーザー40名,コンピューター50台が参加。
 この頃のGIMPSは解析結果をメールで手動でやり取りしていたとも聞きます。
1996-11-13GIMPS、35番目のメルセンヌ素数2^1398269-1を発見。420921桁の世界最大の素数。発見者はJoel Armengaud氏。
1996-11David Vanderschel氏とMark Garry氏が、7名のユーザーと共にOGRプロジェクト(元祖)においてOGR-20の探索を開始。
 OGRとは最短ゴロム定規。測れる長さが同じにならないよう目盛りが配置されているものをゴロム定規と言う。目盛りが20個あるゴロム定規で最も短いものを探す。

 ・ 1997年 
1997-01-29DESCHALLがDES-56bit暗号解読プロジェクトを開始。
 RSA社が解読した者に10000ドルの賞金をかけていました。
1997-春OGRプロジェクト(元祖)は、OGR-20が既知のゴロム定規と同一(既知のものが最短)であることを確認。OGR-21の探索を開始。
1997-03-20distributed.netがRC5-56bit秘密鍵チャレンジに参戦。
 RSA社が解読した者に10000ドルの賞金をかけていました。
1997-06-16DES-56bit、DESCHALLグループによって解読。
 78000台が参加。Texas州から参加のPentium 90MHzマシンが発見。解読された文は"Strong cryptography makes the world a safer place."(難解な暗号が世界をより安全な場所にする)
1997-08-24GIMPS、世界新を更新する2^2976221-1(895932桁)の素数を発見。発見者はGordon Spence氏。
 6年以上たった2003年10月現在でも4位。これより上位3つは全てGIMPSによる発見。
1997-08-26Fabrice Bellard氏は、円周率の1兆番目の二進数字を見つけるため、PI Challengeを始動。(詳細不明。自信なし)
1997-09-22PI Challengeには、20台のコンピュータが参加し、円周率1兆番目の二進数字「1」を発見する。(詳細不明。自信なし)
1997-10-19distributed.netがRC5-56bitを解読。続いてRC5-64解読プロジェクトスタート。
 解読された文は“It’s time to move to a longer keylength.”(より長い鍵を使うべき時がきた)

  1997年は、賞金をかけられた暗号が56bitと比較的手頃だった事もあり、分散コンピューティングプロジェクトが相次いで勃興。プロジェクト参加者間で、DoS(サービス拒否)攻撃合戦などということもあったようです。

 ・ 1998年 
1998-01-13RSA社主催のDES-56bitチャレンジ-II-1に、distributed.net参戦。
1998-01-27GIMPS、世界最大の素数記録更新となる2^3021377-1(909526桁)の素数発見。発見者はRoland Clarkson氏。
1998-02-23distributed.net、DES-56bit解読。
 解読された文は"Many hands make light work"(人手が多ければ仕事は楽になる)
1998-03-21Colin Perceival氏が5兆番目の円周率を計算するPiHexを開始する。
1998-04-19PiHex、円周率の40兆番目を計算する第二プロジェクトを開始。
1998-05-08OGRプロジェクト(元祖)、OGR-21終了。OGR-21も既知のゴロム定規が最短であった。
1998-07-13DES-56bitチャレンジ-II-2開催。distributed.net参戦。
1998-07-17DES-56bitチャレンジ-II-2、EFF(電子フロンティア財団)の暗号解読専用マシンDeep Crackが解読。distributed.netは敗北。
1998-08-21PiHex、円周率の5兆番目が「0」であることを見いだす。
1998-09-06PiHex、円周率の100兆番目の数字の探索開始。

 ・ 1999年 
1999-01-18DES-56bitチャレンジ-III開催。EFFのDeep Crackと協力する形でdistributed.net参戦。
1999-01-19Deep Crack&distributed.netグループ、22時間15分4秒で解読に成功。
 正解鍵を見つけたのはDeep Crack。解読された文は“See you in Rome.”(ローマでお会いしましょう)。第2回AES(高度暗号標準)会議が1999年3月22日〜23日、ローマで開かれることから。
1999-02-09PiHex、126台のコンピュータにより円周率の40兆番目が「0」であることを見いだす。
1999-03電波望遠鏡が受信したデータから宇宙人の営みを感じさせる信号を探すSETI@home、ベータテスター募り、ベータテスト開始。
1999-03-31EFF(電子フロンティア財団)、100万桁〜10億桁以上の素数に、5万ドル〜25万ドルの賞金を出すEFF Cooperative Computing Awardsを発表。
1999-05-17SETI@home始動。マスコミも大きく取り上げ、参加者は爆発的に増加。
 運営側は開始前、10万人も参加してくれれば十分だと考えていたそうです。
1999-05-末SETI@home、115種類のunitのみを、50万人全ての参加者に配るトラブルが一週間前後発生。
1999-06-01GIMPS、世界最大の2^6972593-1(2098960桁)の素数発見。発見者は Nayan Hajratwala氏
1999-08-13アイルランドの数学者Robert Harleyとフランス国立情報科学制御技術研究所(INRIA)は、楕円曲線暗号ECC2-97を解くElliptic Curve Discrete Logarithms: ECC2-97を開始。まずはINRIA内でテストし、8月27日にパブリックリリース。
1999-09-28Elliptic Curve Discrete Logarithms: ECC2-97は、ECC2-97の解読に成功。
 20ヶ国195人の参加者が740台のコンピュータを使用し40日間で。
1999-11-末SETI@home、参加者100万人を突破。
1999-11-17CS Communications and Systems社主催のCSC-56bit暗号チャレンジに、distributed.net参戦。DCypher.netも参戦。
1999-12-13アイルランドの数学者Robert Harleyとフランス国立情報科学制御技術研究所(INRIA)は、ECC2-97に続いてElliptic Curve Discrete Logarithms: ECC2K-108を開始。

 ・ 2000年 
2000-01-10distributed.net、CSC鍵配布サーバの一部に誤った鍵を配布していた問題が発覚。約25%分やり直し。
2000-01-15distributed.net、CSC暗号解読。dcypher.netは敗北。
 この後、dcypher.netは、核廃棄物の最も費用効率のよい長期保存法を探る非営利プロジェクトGamma Fluxを行う。
2000-01Marc HedlundとNelson Minarは、商用・非商用のプロジェクトを行うPopular Power設立。
2000-02-15distributed.net、OGR-24開始。
2000-02-24distributed.net、OGR-24に、複数のプラットフォームでバッファを共有していた場合に問題発生することが発覚。OGR-24休止。
2000-04-12ProcessTreeとDCypher.netが合併してDistributed Scienceに。
2000-04-13Elliptic Curve Discrete Logarithms: ECC2K-108は、ECC2K-108の解読に成功。
 40ヶ国1900人の参加者が9500台のコンピュータを使用し、450MHzマシン500年分の計算量を4ヶ月で。
2000-04-25Popular Power、インフルエンザに対するワクチンシミュレーションプロジェクトを開始。
2000-05-16SETI@home参加者が200万人を突破。
2000-06-15Parabon Computation社がFrontier platformを発表。
2000-07-13distributed.net、OGR-24続いてOGR-25プロジェクトが再スタート。
2000-09-26進化するHIVウィルスの詳細なモデルに対して、何百万もの候補の薬化合物をテストするFightAIDS@home開始。
2000-10たんぱく質折り畳みのシミュレーションを行うFolding@home開始。
更新履歴に続く(2000年秋〜)

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