「相変わらず声は裏返ったままのようだねぇ。私が誰だか判るかね」
「ヘブンハリヤード!!」
「そう。君との付き合いも十年来だね。デスクリムゾンのマニュアルには、『越前の過去の敵たち』等と書かれていたが、君にとっては過去でも、私達にとっては今でも君は敵なんだよ」
そう言ってヘブンハリヤードのボスは、もう1度越前の顔をはたいた。堅く平たい板のようなものと思っていたものは、ケンミンの焼きビーフンの袋詰めパックだった。
「くっそぉ、このやろお。何故俺を敵視する。マルマラの戦争はもう終わったんだぜ。それにお前たちも俺達と同じ傭兵だろ。もう関係ないんじゃないのかぁ」
「あぁ、我々にとっても、あの戦争自体は最初から最後まで何も関係なかった。いいチャンスだとは思ったがね。我々の目的は傭兵として参加し戦争に勝利する事では無かったさ。我々の目的は、君達の入ったあの遺跡だよ。あの遺跡への侵入のために我々は傭兵の立場で近づいていたのだが、君たちに先を越されてしまった」
「なんだぁ、このやろお、遺跡1番乗りマニアかぁ」
ピシッ
ケンミンの焼きビーフン袋詰めパックが越前の頬をたたく。
「あの遺跡が観光施設で無い事は君たちが一番よく知ってるだろう」
そう言ってヘブンハリヤードのボスは越前のクリムゾンを手に取った。
「くっそぉ、その銃が目的かぁ。それなら、せっかくだからくれてやるぜ。そいつのおかげでデスビスノスに追いかけられたり散々な目にあったんだ。ただし縛ったりしたから、サインCDは無しだぜ」
「ありがとう越前君。しかし、それだけではないんだよ。あの君たちがたどり着いた遺跡に我々と一緒に来てもらいたい」
「何故だぁ。あそこにはもう何も無かったぜ。ダニーが隅っこまで金目の物探して、そう言ってたんだから間違いないぜ」
「はっはっはっは、私たちはお金に困ってゲームソフトを売る人とは違うのだよ。あの遺跡には地中深くに埋もれたデスビスノスを呼び覚ます祭壇が設置してある。そしてそれを実行できるのは封印したもの。つまり越前君だけだ」
「あんな怪物呼び出してどうする。以外と臭かったぜ」
「コントロールする。匂いは我慢する。世界が手に入るのなら。我々は制御方法に関する古文書を入手したから、あの遺跡を目指していたのだよ。なのに君たちは『せっかくだから』などと言って……」ヘブンハリヤードのボスは焼きビーフンの袋詰めパックで越前の顔をなめ回しながら憎々しげに言った。
「けどコントロールするのは俺になるんだろ」
「君は呼び出すだけで構わない。呼び出した後は焼きビーフン100年分と大阪までの航空チケットと福井県越前町までの切符代も渡そう。後、クリムゾンに似ていると評判の海外製バーチャガンも渡そう」
「悪い条件ではないな。しかし、もし俺が断ったらどうする」
ヘブンハリヤードのボスは目で部下に合図した。ボスの手にあったケンミンの焼きビーフン袋詰めパックを部下が受け取り袋を破る。
「なんだぁ、焼きビーフン1つで俺を釣る気かぁ」
「違うよ越前君。焼きビーフンはこう使うんだよ」
部下はコンロに火を入れた。そしてその上には蒸し器が置かれた。
「ま、まさか……」今まで強気だった越前も思わず声が漏れた。
「ふっふっふっふっふ、そうだよ。”蒸す”んだ。今、君の目の前で、焼きビーフンは、蒸しビーフンにされようとしているのだ」
「や、やめろぉ。せっかくだから、やめろぉぉ」
「は〜っ、はっ、はっ、はっ。君の決断によって蒸しビーフンになるんだ。後、出来上がったら食べてもらうぞ。食べてる所を写真に取って、Geocitiesにホームページスペース借りて、その写真のっけるからな」
「くっそぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」
越前は目に涙をいっぱい溜めていた。
「"せっかくだから"、私たちと一緒に来てもらえるね?越前君?」
「あぁ、せっかくだからな………」
越前は完全にうなだれている。頭を力無く落とすと同時に涙がこぼれ落ちた。
「よし、では早速来てもらおう。縄をほどいてやれ」
ヘブンハリヤードの部下達が縄をほどきかけている。チャンスだ。今なら反撃に出れるぜ。抑えている性格のこの俺がわざと感情の起伏を激しくしたのを信用してやがるぜ。デスクリのOPでも俺の演技力は最高だったからな。