しばらくすると、日産プレジデントが目の前に止まった。それに乗り込む越前とその大男。運転手もこの大男と同じく、トレンチコートに、サングラスとマスクをかけている。
「あんたら、なんでそんな格好してるんだい。せっかくだから脱いじまいなよ」
「あっ、この格好ですか。我々ブローカーも専業者は数が少なくって、日本中を移動したところで限界がありますから、普段はその地域のゲーム店の者が依頼されて手に入れたりするんです。そのために同業者の所で不要なもめ事を避けるために、このような格好になってしまっているんです」
「へぇ、なるほどなぁ。しかし羽振りがいいんだな。この車」
「VIPをお迎えする時とかにのみ利用するんですよ。私もこのクラスまで高い車を運転するのは初めてです」
と言って男は笑った。それにつられ越前も笑う。
やはり俺の事を判るのは先進的な大都市の奴らか。けどサインCD1枚に3万とは加熱しすぎだぜ。まぁコンバット越前である以上、その価格は自然なんだろうがな。
「着きました。こちらです」
車が到着したのは、山の中にある家……というより別荘という感じだった。
「熱狂的なファンがやってこないため、どうしてもこんな所になってしまうんです」
「大スターの扱いに慣れてんだな、あんたら」
大男の一人が鍵を開け、3人とも玄関に入る。床は板場で、そのまま奥に段差無く進む構造になっている。鍵を開けたのとは別の大男が、壁についたボタンを押す。
ガタン
越前の足元のみの板場が外れ、底がなくなった。
「やりやがったなぁぁぁぁぁぁぁ」
落下する越前の声が徐々に小さくなっていく。
………ドスン
「ヘッヘッヘッヘッヘ」
大男2人の笑い声が聞こえる。そして、またボタンを押す音。その後、大男2人は急いで越前が落ちた板場を修復していく。
シュ〜〜〜〜
「ガスだなぁ。くっそぉ、このやろお、やりやがったなぁ。サインCD欲しくないのかぁ!!」
大男達の返事は無く、数分後には越前は眠ってしまった。