デスクリムゾン アドベンチャープック

No.30

「いや、悪いな。これはあくまで地元での浸透率調査なんだ。またそのうち、都会のシティボーイ向けに、なんらかの対策するからよ」
 越前はそう言って早々に別の店へと向かった。

「せっかくだから、このソフトを売るぜ」
「あっすみません。うちもうサターンは辞めてるんです」
「ちっ、次だぜ」

「せっかくだから、このソフトを売るぜ。ちなみに俺は越前康介。コードネームはコンバット越前だぜ」
「はい。査定させて頂きます………CDに落書きしてますから、買い取り不可ですね。申し訳ありません」
「ちっ、次だぜくっそぉ〜」

「せっかくだから、このソフトを売るぜ。ちなみに俺は越前康介。デスクリムゾンじゃあ大活躍だぜ」
「200円のCD落書き有りで−300円。あっ…最低買い取り価格の50円になりますが、それでよろしいですか?」
「このやろお」

 行く全ての店にて50円以下の買い取り価格を提示され、さすがの越前も精神的に疲れを感じだしてきた。
「くっそぉ、このやろお。思っていた以上に地元の文化レベルは低いなぁ、やっぱ普通のゲームショップじゃ駄目なのか。もっとマニア向けの所でないとな。しかしそんな店無いしなぁ……やはりこのプレミア性を説明するしかないか。しかし自分で言うのはちょっと恥ずかしいぜ」
 越前はそう思案しながら、ファンのふりをしてレアアイテムを売る事を説明するという結論にいたった。

「せっかくだから、このソフトを売るぜ」
「はい。査定させて頂きます」
「俺はデスクリムゾンの大ファンなんだ。これ見ろよぉ、越前様のサイン入りだぜぇ。ほんとは手放したくないんだが、もう1枚手に入ったから特別に売るんだぜ」
「なるほど〜。けど、うちはあまり、そういう価値を判断できる店じゃあないんですがねぇ」
「あぁ、まぁ落書きとかじゃないって判ってくれたら十分だぜ」
「はい。了解しました。えっと……100円になりますね。」
「うっ、くっ、なんだぁ、その買い取り価格はぁ」
「これねぇ。凄いクソゲーって意味で評判なんですよ。で、これ持ってると学校でいじめられるとかってんで、親御さんがお昼の間にこっそり売りに来たりして、市場でだぶついちゃってるんですよ。これでもサイン入りってんで80円プラスしてるんですよ。ただ、大部分の人にとって、このゲームのサインCDなんて逆効果ですからねぇ。ま、みんなで集まった時に大笑いできるように。とかの理由で買う人のためにうちも100円の値段つけたんですがねぇ。ただ、あんまりうちの店もデスクリ置いてるとクソゲーショップとか言われたりするんで、できればやめたいんですがねぇ」
「だ、大都会じゃ人気なんだろ……」
「極一部の人が過激に騒いでるだけだそうですね。あっ、すみません、お客さんがそうだと言うわけでは……」
「か、買い取り価格が低い一番の原因は…なんなんだろうな」越前はもうボロボロになりながらも、なんとか声を出す。
「評判が悪すぎですねぇ。ゲーマーの間でクソゲーの代名詞になってますから」
「そ、そうか……なるほどな……」

 越前はデスクリを引き取り寂しそうにレジから離れる。
 参考までに中古販売価格も見ておくぜ……もしかしたら、この店がぼったくってるだけのかもしれないしな……。越前は疲れ果てた状況でありながらもそう思い『SS:アクション・シューティング』コーナーを覗いてみる。そこでは若者達が騒いでいる。

「おら、クソゲーサンド攻撃ぃぃぃぃ」別の棚から持ってきたのであろうファイナルファンタジー7がデスクリムゾンを両脇に置いた状態で並べられている。
「やめろよ、こら。エアリスがかわいそうじゃねぇか。おりゃぁ〜、必殺クソゲー八方塞がり」サンダーフォース5の置かれた場所を中心に上下の棚も使って8つのデスクリムゾンが取り囲むように置かれている。デスクリのパッケージをよく見ると280円で販売されている。
「な、ところで誰かデスクリやった事あるの?」
「いいや。なんで俺達がクソゲーって判ってるのに、やらなきゃなんないんだよ」
「俺が知ってるのは主人公の名前がコンバット越前ってことだけ」
 その名前を聞き大爆笑する若者達。それを見ている内に沸々と怒りがわき起こる越前。
 こいつらのせいで俺様のデスクリが100円になってるのか……許せねぇぜ。
 越前はクリムゾンを取り出し、

   バーン  バーン  バーン

「うわ、いってぇ〜〜」受けた被害とは、かけ離れた感じの声を出して倒れる若者達。
「せっかくだから、オーノーって言えよ。やはりデスクリを知らないやつはこれだから駄目だぜ」
 越前はもう1発撃ち込んで、「今度こそオーノーを」と考えたが、経過時間からして既に当たり判定は切れてしまっていると思いクリムゾンをひっこめる。
「お前達への餞別に、このサイン入りデスクリムゾンをくれてやるぜ。来世までにせっかくだから勉強しておけぇ」
 そう言って一人の口にデスクリムゾンを押し込む越前。口に入れられた苦しそうにもがいている若者がデスクリムゾンCDを口から吐き出すと、また越前が丁寧にも口に入れ直す。そして今度は吐き出ないようにデスクリムゾンパッケージの真ん中をクリムゾンで打ち抜き、その穴に若者の舌を入れて固定してやる。
 若者達のじたばたとした動きが沈静化したのを見計らい「そこまで言うんだったら、せっかくだから一応お代は頂いておくぜ」と独り言を言い越前は若者達の財布を抜き取る。若者が最後の力を振り絞って言う。
「これ280え……」
   バーン
 越前はすぐさま店を出て行った。店員は越前が出て行ったのを見計らって3人を外の車道にまで出す。どうやら店のイメージが悪くなるのを恐れているようだ。

 未プレイでクソゲーって言われてるんだよなぁ。もっとイメージアップしないとな……俺の正義感の平均以上さが若者には逆にイメージダウンになってるのかもしれねぇなぁ。もう少しワルになった方が良いのかもしれねぇなぁ。
 越前は、ワルになる,ナウなヤングのファッションで戦う,クリーチャーを交換できるゲームにする等の具体化策を検討しながら帰って行った。


おしまい


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