「せっかくだから、俺はこのソフトを売るぜ」越前がそう言った次の瞬間、
ビシッ
越前の後頭部に蹴りが入る。181cmと背が高い越前の頭に入れるのだから、かなりのジャンプ力だ。越前は強敵と巡り会ったと直感的に思った。
越前が慎重に後ろを振り向く。前にいるのは背広を着ている普通のサラリーマンのようだ。小さいパンフの束を持っている。足で蹴られたと思ったが、あれで頭を殴られたらしい。『こいつが俺を……いかにも弱そうだな……なんのために……クリムゾンでの自殺志願か……』越前が戸惑っている間に向こう側から話し出した。
「私はCESAの外交員です。中古ソフトホロコーストキャンペーンのため各地を回っています。中古ソフトは著作権法違反です。我々は頒布権を主張します。現CESA会長のコナミの上月氏も『詩織ちゃんに嫌われちゃうぞ』と言ってます」
「なんだぁ、このやろお。そんなことで殴るな。せっかくだからブルマでも売ってろぉ。ちなみに、あれの中古は駄目なのか?」
「私の役目は、あなたのような人を啓蒙する事です」
CESA外交員は啓蒙ポスターを丸め、その角で越前の目を高速でつく。
「うっ、やりやがったなあ」越前はすぐさまクリムゾンをかまえる。
CESA外交員は啓蒙B6パンフレットを高速で放射状に何重にも渡って繰り出す。越前はそれを1つ1つ打ち落とすが、次のパンフレットの波をまともに被る。
「くっそぉ〜。不利だぜ」
「今すぐ、そのソフトを持ち帰り、中古を利用しなければ、この啓蒙ポスターと啓蒙パンフレットあげますよ」
「いらねぇぜ。中古禁止するのはデスクリムゾンだけで十分だぜ」
「仕方ないですね。では……」
CESA外交員は大きなカバンを取り出し、溜めモードに入っている。今がチャンスと何度もクリムゾンを撃ち放つ越前。CESA外交員は大きなカバンで必死に防ぎ、
「CESA制作 ゲーム白書」
今までの啓蒙B6パンフとは比べ物にならない分厚い本が大量に越前に向かい飛んで行く。
越前は必死にクリムゾンでゲーム白書を撃つが、向こうの物量には勝てずゲーム白書に押されていく。
「やばいぜ。これを喰らったら、さすがの俺様も……」
越前は自分に直撃するゲーム白書のみを見切って撃つようにしたが、それでもやはり押されてしまっている。
「次、リロードしたらアウトだぜ……」そう越前が感じた時に、
「あ〜、ちょっと待って下さい」
めんどくさそうな声によりストップがかかる。
その、めんどくさそうな声の持ち主は店員だった。
「喧嘩するなら、外でやって下さいよ〜〜。それに背広のよく判らない人、店にからむだけじゃなくって、他のお客さんにもからまないで下さい」
今までの啓蒙活動の努力を全て無にする「背広のよく判らない人」発言にCESA外交員はあたふたしながら、店員に事態の説明を行おうと店員の方に駆け寄る。越前はこのタイミングを逃さなかった。
バーン
「オーノー」
店員を前に倒れるCESA外交員。店員はまためんどくさそうな顔をしている。
「なんだ佐藤じゃないか。佐藤のくせに俺に指図しやがったのか……」越前は徐々に怒りがこみ上げてくる。
「それ、お客さんが始末お願いしますよ。うちらだと業務用だからゴミの始末にもお金がかかっちゃうんですよ」店員は倒れているCESA外交員を指さして言った。
「あぁ、すまない。せっかくだから、ちゃんと持って帰るよ」
「さて、気を取り直して、中古ソフトを売るぜ」越前は戦いでボロボロになったカバンからソフトを出していった。
「パッケージとか全部割れちゃってますね。買い取りできません」
「くっそぉ〜」