越前は更に北上した。しばらくすると大きな河に突き当たった。
「なんだぁこの河はぁ」
淀川だった。かなり大きく渡るのは不可能に見えた。橋は少し遠くにあるが自動車専用のようにも見えるが、この距離ではよく判らない。
さすがにこのでかい河を渡るのはヘピーだぜ。しかし橋は遠いなぁ……よし車をヒッチハイクするぜ。俺が手を挙げれば大抵の車は止まってくれるはずだぜ。
そう言って越前はクリムゾンを取り出す。片手を上にあげ、もう一方の手はクリムゾンを車に向ける。何台かの車は手を挙げている越前の前で速度を落とすが、もう片手に気づき猛スピードで去っていく。
「おかしいぜ。こういうのはアメとムチって言うんだがな」
越前はなおもアメとムチのヒッチハイクを続ける。そんな越前に上空から光が一瞬差し込む。その光に驚き上空を見る。
「ありゃあ、デスビスノスの宇宙船……」越前は思わず声をあげる
空には円盤状の物体が浮遊している。越前はクリムゾンを円盤に向ける。
「止まれぇ、せっかくだから、こっちに来いよ〜」
バーン バーン
そう叫びクリムゾンを円盤に向かって撃つ越前。円盤は一瞬止まったような動作を見せたが、また進もうとする。
「シカトするなよ、おらこい、デスビスノス〜〜」
叫びながらさらにクリムゾンを撃つ越前。それに観念したのか越前の方に近づき側に着地する円盤。
「よおデスビスノス」
着地してすぐ勝手に円盤の扉を開ける越前。以前にも入ったことがあるので設備利用はお手の物だ。
「キョンエ〜〜〜〜〜、故郷に帰るんだ。前は、お土産にクリムゾンを……と思ったんだが、もうそんな事はやめるんだ。越前にも別れの挨拶代わりにこれをやるから、帰してくれ」そう言って越前にケンミンの焼きビーフン5個入りパックを渡すデスビスノス。
「おぉ、そうか。帰るところすまねぇな。帰る前に、せっかくだからちょっと俺をこいつで大阪府池田市石橋町まで運んでくれよ。エコールに行くんだ。エコールお前も知ってるだろ?」
「キョンエ〜〜〜〜〜、すまない越前。あの辺りは飛行禁止なんだ。近くに大阪空港があるんだ。円盤とかがあの辺り飛ぶのは危ないんだ」
バーン
「デスビスノスが、人間の作ったルールに遠慮してどうするんだよ。せっかくだから行けよ。また倒されて泥の中に沈められたいのかぁ」
「キョンエ〜〜〜〜〜、判った行くよ。ステルス形態に変形するから、待避場所に入ってくれ。駅に近いし人口密集地だから着陸はできないんだ。その待避場所ごと、ゆっくりアゼリアタワー屋上に降ろすんだ。それでいいか?」
「あぁ、構わないぜ。気ぃ使わせて悪いなぁ」
越前は待避場所に入り、デスビスノスは宇宙船を動かす。浮遊する感覚が窓のない場所にいる越前にも判った。しばらくして待避場所の壁四方が光りだす。その光を見ているうちに越前は意識が遠のいていく。
「デスビスノスの野郎、なんだぁ、このひか……」越前は気を失ってしまった。
ガタン
機械の駆動音に目が覚める越前。
「なんだぁ、どうなったんだぁ、答えろぉ、デスビスノス」
越前は怒鳴り、クリムゾンを取り出そうと服に手を突っ込むがクリムゾンが無い。
「このやろお。眠らせてクリムゾン奪うなんて卑怯だぞぉ」
「越前、すまない。ちょっと熱いが我慢するんだ」
ガコン
越前の入っていた避難場所が部屋ごと4つに割れる。割れて外の風景が見える。外には地球が映っている。
「やりやがったなぁぁぁぁぁぁ、ちゃんと池田市石橋町につくんだろうなぁ」
越前は地球の重力に吸い込まれ、数十分後にはジュッと溶けてしまった。