デスクリムゾン アドベンチャープック

No.10

「コンバット越前だぁ」
「よお越前。ダニーだ。久しぶりだな。電話ありがとうな」
「国際電話なんだから、せっかくだから、そのだみ声なんとかしろよ。よく聞こえねえぜ」
「越前、国際電話の品質じゃあ、そんな裏返った高音域は聞き取りにくいんだ。もう少し電話で聞き取りやすいように話してくれ」
 そう言った後、二人はすぐに大笑いした。どうやら二人だけのいつもの挨拶の一種らしい。

「で、越前、お前金に困ってるんだって」
「あぁ、医師の資格を停止されちまってるんだ。それで別の仕事を見つけるまでの間、なんとか金を借りれないか」
「構わないぜ。どれくらいいるんだ?とりあえずは50万円程でいいか?」
「助かるぜダニー。やっぱ生死を共にした戦友は頼りになるぜ」

「ところで越前、実は頼みたい事があるんだ」
「なんだぁ、なんでも言ってみろよぉ」
「実はうちの会社で、焼きビーフンを大量に仕入れたんだが、こっちじゃ売れずに在庫の山になってしまってるんだ。そこでKOT症候群研究の第一人者のお前が『KOT症候群に効果あるぜ。せっかくだからダニーの焼きビーフンを選んでくれ』ってCMしてくれれば、在庫の山も解消するんだが……無理か?」
 くっ、CM出演とは、50万円の代償にしちゃあ大きすぎるぜ。しかし借りといて断るのもなんだな……ダニーの奴、やはり交渉が上手いぜ。
「あぁ、構わないぜそれぐらいのこと。焼きビーフンが倉庫に眠ったままってのは、俺としても寂しいからな」
「助かったよ越前。日本のスタジオ借りて手間は極力かけないようにするから、よろしく頼むよな」

**CM撮影スタジオ**

 越前はスタジオに到着と同時に軍服を着せられる。背中には大きく「YAKI BIFUN」と記されている。そして、銃の代わりに焼きビーフンの袋詰めパックを持って走るようにと監督から細かな説明を受け撮影に入る。

「ダニー、焼きビーフン 食べてるかぁ」
「あぁ、ちょっとはな」
「KOTになるぞ、気をつけろぉ」

「KOT症候群に効果あるぜ。せっかくだからダニーの焼きビーフンを選んでくれ」

 監督からOKのサインをもらいにこやかに帰る越前。ダニーの声まで、無理矢理声を低くして出す1人2役だったが1発OKだった。
「俺は勇気・正義感だけでなく演技力も平均以上だな」越前は50万円受け取った事もあり上機嫌だったが、CM放映後も焼きビーフンの在庫量は変わらなかった。


おしまい


デスクリムゾンリンク集に戻る デスクリムゾンアドベンチャー冒頭に戻る